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【経営課題整理法】②損益計算書分析で問題点をつかむ~収益性の問題点をつかむ~

収益性の問題点をつかむ

1.変動損益計算書とは

変動損益計算書は、売上高から変動費を控除し限界利益を表示する様式で、直接原価計算様式ともいわれます。通常の損益計算書に比べて利益予測や利益計画に役立つなど、戦略的に優れています。

財務会計における損益計算書の計算式

売上高 - 売上原価 = 売上総利益
売上総利益 - 販売費及び一般管理費 = 営業利益
営業利益+ 営業外収益 - 営業外費用 = 経常利益

管理会計における変動損益計算書の計算式

売上高 - 変動費 = 限界利益
限界利益 - 固定費 =経常利益

限界利益は、売上高が1単位増えるごとの増加利益を表しています。
売上高に対する限界利益の割合を限界利益率といいます。

限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高 × 100
      = (売上高-変動費) ÷ 売上高×100
      = 1 – 変動費率

【例】

2.費用の性質

売上原価や販売費及び一般管理費の中には、売上高の増減に応じて変化する変動費もあれば、売上高の増減に関係なく毎期発生する固定費もあります。

よって、費用を変動費と固定費に分けて捉えることによって、企業の収益性をより正確に把握することができます。

また、変動費と固定費では費用の性質が異なるので、削減方法も自ずと異なります。よって、コストダウンを図る場合にも、変動費と固定費に分けて検討することが大切です。

(1)変動費

変動費とは、売上高や工場の操業度の変化に伴って比例的に発生する費用で、材料費、外注加工費、荷造包装費、残業手当、歩合給などがあります。

(2)固定費

固定費とは、売上高や操業度の変化に関わりなく発生する固定的な費用であり、仮に売上がゼロであっても発生する費用です。固定費には人件費、減価償却費、賃借料のほか通常の支払経費などがあります。

(3)準変動費・準固定費

全ての費用項目が、純然たる変動費、固定費に区分できるわけではありません。

電力料、ガス代、水道料のように、基本料金の存在等によって操業度がゼロであっても発生するものの、操業度の変化に応じて比例的に発生するものを準変動費、間接工の賃金などのように、操業度が大きく変化するまでは固定的に発生する費用を準固定費と考え、より実態に合った費用区分をすべきです。

3.変動費・固定費の分解方法(固変分解)

(1)個別費用法

個々の費用科目ごとに変動費、固定費の分解をするのが個別費用法であり、以下の2通りの方法があります。

科目を要素別に分解して固定部分は固定費・変動部分は変動費とする方法
科目の性質によって変動費に近いものは変動費とみなし、残りを固定費とする方法

①の方がより厳密ですが、作成コストや分かりやすさを考慮すれば、②の変動費を主要なものに絞り、残りを固定費とするやり方でも差し支えありません。

(2)分解例

小売・卸売業一般製造業
変動費売上原価+物流コスト+販売手数料 等材料費+外注加工費+工場消耗品費+動力費 等
固定費その他の費用その他の費用

その他、会社の実情に応じて重要な変動費がある場合は、適宜加えます。

4.変動損益計算書を3期比較する

●卸売業A社の事例

【損益計算書分析】

  3期比較変動損益計算書分析

【分析ポイント1  大筋で傾向をとらえる】

・増収増益
・増収減益
・減収増益
・減収減益

決算書分析では、まず大枠で収益状況がどのようになっているかを捉えます。傾向は上記の4つのパターンに分類できます。

増収増益であれば、過去の取り組みが経営成果となって現われていることになりますし、減収減益であれば過去の取り組みが不十分であったか、取組方針が間違っていた、競合の発生、などが挙げられます。

【分析ポイント2  その傾向の要因分析をする】

①収益の傾向

●売上高の推移
(イ)増加要因
  販売数量の増加、販売単価の上昇、顧客数の増加、営業力の強化、新商品の開発
(ロ)減少要因
  販売数量の減少、販売単価の低下、顧客数の減少、営業力の弱体化、競合の発生、商品の陳腐化、商品開発の遅れ

②3つの利益推移

●限界利益の推移
(イ)増加要因
  変動費率の低下、直接材料費の低下、外注費の低下、内製区分の見直し、仕入の減少
(ロ)減少要因
  変動費率の上昇、販売単価の低下、直接材料費の増加、外注費の増加、仕入の増加

●営業利益の推移
(イ)増加要因
  人件費の減少、その他固定費の減少
(ロ)減少要因
  人件費の増加、その他固定費(不動産賃借料、水道光熱費、通信費、減価償却費、旅費交通費、接待交際費等)の増加

●経常利益の推移
(イ)増加要因
  支払利息の減少、受取利息・配当金の増加、雑収入の増加
(ロ)減少要因
  支払利息の増加、受取利息・配当金の減少、雑収入の減少

③部門別損益を分析する
  • 得意先数・客数の増減を分析する
  • 営業所別の売上分析をする
  • 地域別の売上分析をする
  • 商品・製品別の売上分析をする

※売上や利益の増減を分析するには、この部門別分析が必須です。

大枠での傾向がつかめたら、その傾向を生み出した要因を探っていきます。
分析の項目は①売上高の推移、②三大利益(限界利益、営業利益、経常利益)の推移、③部門別損益の推移の3項目となります。