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【経営課題整理法】②損益計算書分析で問題点をつかむ~売上・利益の推移から傾向をつかむ

売上・利益の推移から傾向をつかむ

1.売上高・利益の推移から傾向をつかむ

【分析ポイント  事例企業A社のトレンドを見極める】

売上経常利益
前々期1,217,167千円16,688千円
前期1,156,443千円 △60,724千円5,484千円 △11,204千円
当期(直近決算)1,212,560千円 +56,117千円9,332千円 +3,848千円
直近2年間だけをみると、「増収・増益」となっているが、2年前の売上高と経常利益からみると売上高は同水準になっているが、経常利益は大きく減少しており、「減収・減益」と判断できる。

2.決算書を詳細に見ていくと要因がわかる

【分析ポイント  事例企業A社の売上高・利益の推移をみる】

①売上高の傾向

前々期1,217,167千円
前期1,156,443千円 △60,724千円
当期(直近決算)1,212,560千円 +56,117千円
売上高は前々期に減少しているが、当期(直近決算)には2年前の水準に戻している。

②三大利益の推移

●限界利益の推移

前々期365,311千円
前期361,131千円 △4,180千円
当期(直近決算)382,210千円 +21,0797千円

●営業利益の推移

前々期28,286千円
前期11,190千円 △17,096千円
当期(直近決算)37,800千円 +26,610千円

●経常利益の推移

前々期16,688千円
前期5,484千円 △11,204千円
当期(直近決算)9,332千円 +3,848千円

  前期には3つの利益とも減少しているが、当期(直近決算)には回復。
しかし、経常利益は前々期の水準には回復していない。

【三大利益を左右する経費の推移】

●変動費の推移

前々期851,856千円
前期795,312千円 △56,544千円
当期(直近決算)830,350千円 +35,038千円

●人件費の推移

前々期241,419千円
前期257,134千円 +15,715千円
当期(直近決算)264,300千円 +7,166千円

【増加科目】
  役員報酬、給与手当、法定福利費

【減少科目】
  雑給、賞与、福利厚生費、その他人件費

従業員数の増加(+1名)、役員の増加(新任2名、退任1名)、これらに伴う法定福利費が増加している。

●その他固定資産の推移

前々期95,606千円
前期92,807千円 △2,799千円
当期(直近決算)80,110千円 △12,697千円

【増加科目】
  保険料

【減少科目】
  交際費、減価償却費、消耗品費、車両費、修繕費、租税公課、拡売費、支払手数料

役員増加に伴う保険料(企業防衛)の増加
拡売費(DM、小額の什器、販売手数料など)の減少→テナント閉鎖に伴う減少

【3つの分析ポイントから抽出した問題点】

①人件費の増加

●賞与は減少しているが、給与自体は増加している。

●役員報酬の増加(2名増加)

②人件費以外の固定費では、保険料の増加が突出している

 →役員保険への加入

③限界利益は増加しているが、棚卸資産も増加しているため利益の調整がないかを確認する必要がある

 →棚卸資産の水増しが判明

④その他

 支払利息は増加傾向にあるため、金利の交渉などが必要となる。

3.変動費の推移から売上高とのバランスをみる

変動費は売上に比例して増減しますが、材料費や燃料など外的要因で価格が高騰し売上と関係なく増加するものもあります。調達先を吟味し、条件のよい先への切替えなどを検討しなければなりません。また、社内でも不良在庫の一掃、歩留まりの向上などマイナス要因を除去する取り組みを怠ると、変動費は自然と増加します。

小売業や卸売業の仕入については、販売計画との連動を考慮しないと仕入は膨らむ一方です。仕入担当者は販売計画との整合性や在庫管理責任者、営業責任者と密に連携を取り適正化を進めます。

仕入先や外注先との長い取引きの中で仕入代や外注費の削減は、慣れあいの関係なため、言い出しにくいことは非常に多くあります。

しかし、変動費の削減は非常に重要です。発想を変えて、明日から今と同じビジネスを始めるとしたら、どこから仕入れるか、どこに外注を頼むかなど、当然、安くて質のいい会社を探します。

その発想で再度、仕入先、外注先を再検討してみる必要があります。

4.固定費の推移から増減の妥当性を検証する

固定費は増加した科目を精査し、増加の要因に妥当性があるか検討しなければなりません。固定費はすべて圧縮すべきものではないからです。

人件費は適正な労働分配率の範囲内にあるかを見ます。また、政策的に人材を採用した場合は生産性が向上したかを確認します。研究開発費など将来の利益確保に向けてかけるべき費用(利益貢献経費)についても妥当性を吟味します。唯一圧縮して良い固定費は節減可能費としてとらえ、可能な限り圧縮させることです。

「コストカッター」の異名をとる、日産のカルロス・ゴーンは仕入コストを1割削減しましたが、方法は実に合理的でした。部品、ユニットのサプライヤーの数を約1,400社から約800社に減らしました。全世界を対象にし、仕様を見直し、過去のしがらみを除いて、純粋に日産にとって最も有利なサプライヤーを選択したのです。また、人員削減も23,000人の解雇を行うと同時に、研究開発を中心として優秀な人材を一方では9,000人採用しています。売上を増やす為の準備を怠らなかったことが窺えます。

「販売費は削減しない」という考え方もあります。売上高が下がっているときに販売費を削減するとますます売上が下がります。

当たり前の事なのですが、不況になると広告宣伝費削減、営業スタッフのコスト削減といった話がすぐ出てきます。

未来開発費の削減も同様です。研究開発費や教育訓練費といった投資費用も不況時のコストダウン項目に上がりがちです。

しかし企業は、投資を行って果実を得るという流れになっています。意味のない投資はもちろん止めるべきですが、投資を止めると企業の成長はなくなる事を注意しなければなりません。

基本的に企業活動は、投資を行う(固定費増加)→付加価値増加(変動費率低下)という関係になっています。よって固定費を削減するリストラ政策で利益のバランスをとろうとし続けると、固定費削減→付加価値減少→固定費削減→付加価値減少となっていって、負のスパイラルから抜け出すことかできません。

不況下においても経営とは常に何に投資すべきかを考えないといけないのです。